「宗教と社会」学会による行政刷新会議への意見表明

 行政刷新会議「事業仕分け」は、予算編成の透明化、行政から無駄をなくす画期的なやり方として国民から支持を得ているところであり、仕分け作業に従事された方々の努力に敬意を表するものであります。しかしながら、学術研究推進関連予算に関しては十分に論議が尽くされないまま、見直し・予算の縮減という決定がなされたと考えます。
 人文学・社会科学の諸領域から人間社会と宗教文化の関わりを研究する「宗教と社会」学会は、大学の基盤的経費と競争的研究資金、及び次世代育成支援の財政的拡充を政府に強く要請します。日本学術会議会長談話(http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-d5.pdf)に明確に示されているように、科学技術の振興は一朝一夕になるものではなく、基礎研究の積み重ねが重要であります。また、人文学・社会科学は人間社会の理解や文化の継承に大きな役割を果たし、国際理解や平和の構築に資するところが大であります。
 この度、第3作業部会において、若手研究者育成に関わる競争的資金(日本学術振興会特別研究員事業[事業番号3-21-(3)]、科学研究費補助金費若手研究(S)・(A)・(B)、特別研究員奨励費[事業番号3-21-(2)]、科学技術振興調整費によるテニュアトラック制支援[事業番号3-21-(1)]と女性研究者支援システム改革[事業番号3-39])の大幅な縮減が求められました。今後も科学技術振興費・文教予算に対して厳しい評価が続くものと予想されます。
 人文科学・社会科学の分野において、学術研究の成果はすぐに現れるものではありませんが、若手研究者への支援は将来への投資と見なせます。縮減の対象となった競争的資金の競争率は高いものであり、選抜された若手研究者は優れた中堅研究者に育ちました。このような成果を十分に評価することなく、リサーチアシスタントや特別研究員のポストを単なる生活補助の施策と見るような意見が会議の席上出されることに強い危惧を感じます。
 また、大学は国公立大学法人、私学を問わず、世界的に見ても高額な授業料を学部生・大学院生に負担してもらいながら教育改革と経営改善の努力を続けてきましたが、人件費・物件費の削減も限界に近いものがあります。今の大学には基盤的大学運営費の確保に加えて、ぎりぎりの学資負担にあえぐ家庭やアルバイトに追われる学生・大学院生のために、貸与型奨学金から給付型奨学金への転換など多くの施策が必要です。
 政府閣僚、民主党議員、及び文部科学省の各位におかれては、知的基盤社会において高等教育機関・研究機関が果たす役割と国際社会に対する日本の学術的貢献の重要性をご理解いただき、是非とも中・長期的視野に立って高等教育・学術研究推進のために財政的な支援を強化されるよう強く要望いたします。


平成21年11月27日

「宗教と社会」学会
会長 櫻井義秀


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